'講演会' に関する記事のまとめ

2009.05.12 火曜日 [ Latest News, サイエンス, 大学]

益川敏英教授 講演会@駒場

5月9日東京大学駒場キャンパス900番講堂で昨年ノーベル物理学賞受賞された益川先生の講演会があった.
参加は無料で,新入生を対象という建前の講演会であったが,翌日(新入生だけで模擬店を開催する)「新フェス」が行われるための準備で新入生があまりいなかったのも事実ではある.(とはいえそこそこいた)
そういう僕ももはや二年生であるが…

講演開始時間は14時,しかし受付開始は12時半とちょっと早め.
僕はさらに早い12時10分ごろ東大についた.
しかし,もうすでに列ができていた.
さすが,ノーベル賞受賞者への関心は高いんだなあと改めて実感.

といっても早めに列に並んでまで整理券を受け取るのも面倒だったので,12時半ごろまでは生協購買部や食堂で友人とまったり.
12時半ちょっと前にいくと,列の長さはさらに長くなっていた.
といっても200人はいなかったように感じる.
人気,といえるのかどうか微妙な人数だ.

とにかく,友人の分の整理券も受け取らなくてはならなかったので,一度整理券をとって席を確保してから再び列に並びなおした.
学生には学生証をチェックしていた建前上,一度に複数枚とることが認められていなかったからだ.

ところで,講演会開催には事務方のスタッフが必要になる.
今回の講演会の企画は,駒場の理系の研究室の先生方と,一部の手伝いの学生で構成されていた.
その学生スタッフのうち二人ほどが知り合いだった.
二回目の整理券確保後,スタッフの友人と話していると,後ろから
「益川先生が到着されました.いま正門にいらっしゃいます.」
とのこと.
いやいや,要人は裏側の門から招き入れるんじゃないのか? と思いながら,一緒に講演を聞きに行ったHとともに正門に行ってみることに.

・・・
まさかおひとりでいらっしゃるとは思いもしなかった.
正門入ってすぐ右の守衛所の横に立っているではないか!
900番講堂は正門入って左にあるからか,益川先生目当ての人は(門の右側に立っている)白髪の人に気づかないまま,左の目的地に急いで歩いていく.
何という滑稽な光景だろうか.

とはいえ僕自身も直接話しかける勇気がなかったので遠巻きに見ているだけだったが...
しばらくすると後ろから,駒場のお偉い物理の先生方が迎えに来た.
益川先生は別室に連れて行かれるようなので,僕らも会場にもどった.



そして講演会開始.
まずは,物理学会のときの講演会と同様に,主催者の挨拶ののち,CP対称性の破れについての解説があり,その後に益川先生の講演である.
解説をされた先生は,普段は益川先生のことを「益川さん」と呼んでいるようなのだが,今回の講演では「益川先生」と呼ぶように努力していた.(大学側からの要請か?)
解説中「益川さん」と口走ってしまい,あわてて「益川先生」と言いなおすことが頻繁にあった.
普段通りの呼び方で呼んだほうがよさそうに感じるのだけど…

また,益川先生は以前東大の原子核研究所(今の高エネ研)に所属された時代もありその当時,東大で試験監督をされたこともあるらしい.
たぶん当時の学生は将来ノーベル賞を受賞する先生だとは想像もしなかっただろう :苦笑

さて,そして益川先生のご講演が始まった.
あらかじめ用意した講演内容とは異なり,気の向くままに話してくださったようだ.
物理学会の市民講座のときと同じ論題だったので,同じ話もあったが,だいぶ市民講座とは内容が異なっていた.

彼は,天才の定義についても話をしていた.
天才は3種類のタイプに分類される.と
一つ目は秀才タイプの天才.
何人かの物理学者の例をあげていた.

二つ目は変人タイプの天才
ランダウという有名な物理学者がいるが彼はこれに該当する.
誰も信じそうもないような仮定から,理論を展開し現実を説明する彼の理論の展開のやり方は確かに有名だ.
今でもランダウ物理学教程という本は邦訳本もいくらか出版されているが,その本が難しいといわれる理由は,理論の出発点(公理)が現実と乖離しているように感じられるからであろう.
しかし,それはきれいな理論体系 (少ない公理から豊かな定理が生み出される体系) を実現するために敢えて洗練された公理だけを採用しているのかと思いきや,益川先生によると,彼はもともとの思考回路がそのような信じがたい公理系からの理論の導出をするようにできていると言っていた.
確かに,そのような一般人とは違う論理で物事を考えるからこそ”変人”といわれるわけだが.


他には友人の存在の必要性を話していた.
益川先生自身,ノーベル賞をとる際には小林先生の存在があった.
しかし実は小林先生と益川先生が一緒に研究したのは必然性によるものではなかったようだ.
というのも,益川先生は小林先生よりも年上ということもあって先に京都大学へ助手として行った.
その後小林先生が京大にいくわけだが,京都での生活などについて研究室の先輩であった益川先生に手紙で(メールでないところが時代を感じる)話を伺っていたようだ.
文通の中でお互いの興味のある研究の話になり,お互いCP対称性の破れというテーマに興味をもっていることが分かり共同研究をすることになったようだ.
当時,理論ではCP対称性という対称性(粒子と反粒子は対称的に存在する)と考えられていたのだが,ある加速器による実験結果から対称性が破れていることが判明していた.

とにかく,それ以来益川先生と小林先生は共同でCP対称性の破れの理論について議論を重ねて理論を作ったようだ.
益川先生曰く,友人の存在は教官の存在以上に重要だ.と
たしかに教員は学生よりは年上であるし,権威もある.
権威があるということは,責任が大きいということ.
できるだけ嘘を言いたくないという思いが強くなる.
そうすると,新しい理論の提唱だとかはふと頭の中で思いついたとしても嘘かもしれない,という恐れから新しい理論を口外する事が出来なくなる.
(これは益川先生だけでなくいろいろな人が,同じようなことを言っているが.)

つまり,学生が新しい理論を考えたと言って先生にもってきたとしても,先生はこの恐れから従来の理論からあまりにも逸脱した内容の考えには賛同しかねてしまうようだ.
野依さんの講演会で,ある院生が自分の実験についてアイデアを伺いたくて講演の休憩時間に直接質問をしたところ,野依さんからの返答は「自分の思うようにやりなさい」だったとか.
これも,上記の理由によることだろう.

だからこそ(教官の存在以上に)友人の存在は重要.
一人で研究するより,二人で研究したほうが能率がだいたい1.5倍になると言っていた.
友達は必要だし,活用すべきだと.

そういえば,僕が高校時代通っていた塾(現在のバイト先)の合格祝賀会で卒業生代表のスピーチをした際に「友達は便利です」だなんていう失言!?をしてしまった記憶があるのだが,
その意図としては,益川先生のおっしゃったような,友人と議論することで新たな発見が生まれたり,切磋琢磨しながらより知識を増やすことができる.ということだ.
さまざまな (限られたメンバーだと視野が狭くなるのでできるだけ幅広く多くの) 友人との議論を積極的に行うように心がけなければ,と思った.


そして,益川先生は,研究者(とくに理論屋)は自分の見た参考文献を見なかったことにする傾向にある とも話された.
あくまで,自分が論文中の理論をすべて導いたかのような美しさをアピールしたいという気持ちになるからだそうだ.
この点についてはあまり具体例を知らないが,確かに僕が理論屋であるなら,論文の最後に書く参考文献はあまり多くしたくないかもしれない.


また,理論の発見は,(お互い無関係の研究者たちから)同時期に発表されることが多い,ということも言っていた.これも様々な理論において有名な話だ.
実際には,実験物理学の範疇でもしばしば,複数の研究所で同時にある事象が発見されることもある.

科学の進歩は何らかの時系列に従って発展するのかもしれない.と言っていた.
裏を返せば,現地点では全く解決できそうもない問題も,全力を尽くして取り組めば,いつかは (その問題が解決されるべき時がくれば) 解決されるであろう,ということだ.
(ちょっと論理的には飛躍がないわけでもないが:笑)


他にもいろいろと面白い話をしていただいたが,僕が記憶しているのはこの程度まで.
また講演会がある際にはできるだけ記録に残しておきたいと思う.

2009.04.01 水曜日 [ Latest News, サイエンス]

物理学会ーノーベル賞記念講演ー

29日は立教大学へ
「日本物理学会市民科学講演会 ノーベル物理学賞受賞記念講演会
ーサイエンスへの限りない好奇心ー」を聴きにいった。
午前中はバイトがあったために、会場へはギリギリで到着した。
生協食堂でカツカレーをかきこみ、開始時間に間に合った。

初めは物理学会長の二宮先生、そして協賛者の二人の方の挨拶で始まった。
その後、素粒子物理学の先端の理論物理学者の東島清教授(阪大)、CP対称性の破れの実証のリーダーをされた高崎史彦教授(KEK)のお二人の解説がある。
物理学会ということもあり、解説する内容はとても深い内容まで、しかも高校生にでも分かるように丁寧に話されていた。
ファインマンダイアグラムをもちいた電子の対消滅対生成の話と、CP対称性、カイラル対称性のお話、そして、K中間子のCP対称性の破れの発見とそこから得られた小林益川理論に至るまでのお話を伺った。
途中、行列が登場したのだが、行列の成分の中にファインマンダイアグラムが入っていて、何じゃこりゃ?と理解に苦しむ部分もあったが。(なんとなくいいたいことは分からなくもなかったが。。。)
やっぱり素粒子物理やる人の数学って難しそうだなぁー。と実感。

にしても、世間で騒がれる割に、まったく小林・益川理論の内容を知らなかった僕にはとてもいい講演を聴けた。

そして、高崎先生。
やっぱり実験物理学者もすごいなぁと実感させられた。
小林益川理論を最終的に証明したのはKEK(高エネルギ加速器研究機構)のKEKB加速器(Bファクトリー)とスタンフォード線形加速器センターのPEP-II 加速器である。
日本としては、KEKBで理論を実証出来たことはとても誇りに思えることだ。
KEKBの性能はとても高い。
しかも、加速器は整備点検などで停止することがしょっちゅうあるのだがKEKBは年間の9割以上の時間運転を続けている。
しかし、その高い性能を維持することはとても大変だそうだ。

いつも思うのだが粒子加速器の技術力の高さはすごい。
特にKEKBはLHC(スイスにある世界最高エネルギーの加速器)の陽子反陽子衝突と異なり、電子と陽電子(電子の反粒子)のビーム衝突で実験する。
電子ビームは陽子ビーム以上に小さい半径のものだ。
それを逆方向から飛んでくる陽電子と衝突させるわけだ。


以前、日本科学未来館で展示解説のボランティアをしていた時、KEKBについての展示が新しくなる際に、KEKBの研究者のお話を伺う機会があった。
そのときは、陽電子を加速するのは電子よりも難しいため、電子ビームに比べ、陽電子ビームのエネルギーは上げにくい(あまりエネルギーが大きすぎると、陽電子から出る光によって加速器の配管から電子が放出され追従滅してしまうため。)ということ、
そしてその技術はとてもすごいものだということ、くらいしか分からなかった。
しかし、今だからこそこの講演会を聴くことで、分かったこともとても多かった。


さて、二人の先生の解説のあと、江崎先生、小柴先生の挨拶があった。
(さすがは物理学会。ノーベル賞受賞者を4人同時に生で見れるとはすごすぎる。。)
そのご益川先生、小林先生のご講演があった。
お二方からも興味深いお話を伺うことが出来た。
理論の解説というよりも、どちらかというと一個人の物理学者としていままでやってきたことを聴かせて頂いたという感じだ。
しかし、ここのところの疲れと、理論・実験双方の解説で集中力を使い果たしてしまったため、実はちゃんと話をすべて聴くことができなかったのは内緒にしておこう。

今度、夏の物理チャレンジの際のご講演を聴く際にはちゃんと体調を万端にして講演を伺いたいと思う。



講演終了後は会場はサイン会と化していた。
僕は、大学の知り合いや先輩達(学会のお手伝いをされている方もいる)とおしゃべりしながらサイン会の様子をぼんやりと見ていた。
(人だかりで1mくらい離れたところにしか、いられなかったというだけのことであるが:笑)
結局ミーハーな方々がサインをもらっているのを眺めるだけで帰ることにした。
サインもらったところで、そんなことに浮かれていて勉強を怠ってしまっては本末転倒だもんなぁ・・・
(と書きつつも、本当は若干サインは欲しかったかも… :笑)

2008.10.25 土曜日 [ Latest News, サイエンス]

「量子力学による情報技術の革命」

今日は日本物理学会主催の「量子力学による情報技術の革命」という公開講座に行った。
場所が自分の大学のキャンパス内であったこと、それと今年の物理チャレンジでスタッフをされていたO先生が世話人をされていて、物理チャレンジの際にこの講座の受講を勧められ、内容に興味があったからである。

大雑把にいってしまえば今話題の量子コンピュータ、量子通信の内容の講演会である。
3人の講演者の方が順に約1時間ずつお話をされた。
もともとこの講座の対象ターゲットが高校生であるため、内容は複雑な数式を出来るだけ減らして大変わかりやすいものであった。
量子論のいくつかの性質を利用した計算機や通信方式であるがうまく説明していたので、僕自身もとても理解しやすかった。


講演会ののち、一緒に聴きに行った友人Nと、先生方にいくつかの質問をしていると結局最後まで会場に残ってしまった。
会場の机の状態を元に戻したりとO先生の手伝いもしていたら、先生のお誘いで講演者の先生方とともに喫茶店でも、と誘われたのでご一緒させていただくことにした。
ところが残念ながらキャンパス内の喫茶店はもうしまっていた上、キャンパス周辺の店も予約が入っているなどで店が見つからない。
ということで渋谷まで出ることに。

結局は渋谷の居酒屋で食事をした。(※もちろん「未成年なので」僕らは飲酒していないが笑)
喫茶店のつもりがちゃんとした夕飯をごちそうになることになった。
ご飯を一緒に食べさせて頂き、誘ってくださった先生方には大変感謝している。

今回は初めて生の研究者の方と一緒の食事をしながら様々な話を伺った。
以前物理チャレンジの先生方とお食事させていただいたこともあるが、その際は「物理チャレンジ」という共通の話題があった。
しかし今回は純粋に「物理」という接点しかないうえに、初めて会ったばかりの先生方とご一緒の食事である。
とても刺激的だった。
接点が「物理」しかなかったものの話題は尽きず、今日の発表の内容についてや、以前の研究についてのお話を伺うこともできたし、企業研究者と大学研究者のそれぞれの環境の現状、科研費についての問題点や、高校・大学での物理教育についてのお話を伺い、時々議論に混ぜて頂いたりもした。

学部一年生としては滅多に経験できない体験(?)をさせていただいたと思う。
このようなチャンスを与えてくださったO先生、また東大教養学部のH先生や、今回この講演会で講演してくださった先生はじめ一緒に夕飯で様々な興味深い話をしてくださった先生方、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

今日の刺激を得て、あらためて物理学の勉強もがんばらなくては! と感じた。
忙しい毎日が続くが物理の勉強をちゃんと続けて行きたいと思っている。


PS
ところで来週にまた本郷で東大理学部の公開講座があるのだが、行くべきかどうか迷っている(笑)
3週連続で講演会に出席しているとさすがに時間的にもきついからである。
もし公開講座に出席したらその内容も日記に書きたいと思っている。

2008.10.20 月曜日 [ Latest News, サイエンス, 大学]

「これからの科学リテラシーを考える」

というシンポジウムに18日に参加してきた。
(主催者:東京大学生産技術研究所 知の社会浸透ユニット)

13時開始の講演会の後、パネルディスカッション、そしてその後懇親会があり結局20時過ぎまで続き、最初から最後まで参加した僕にとってはとても長い一日であった。

一市民として、いくらかは科学に対しての知識(リテラシー)がなければならない。
という考えのもと、ではどうすれば科学の知識を得ることができるのだろうか。
ということを論ずる会である。

なぜ科学リテラシーが必要かというと、それは現代社会における、いかにも科学的根拠があるかのように見せかけるウソを嘘であると見抜けるような能力が必要だからである。
ひところ、某民放テレビ番組の影響で日本中に蔓延してしまった「マイナスイオン」という、いかにも科学的裏付けがありそうで、全くScienceでは定義されていない言葉を創った上、それが健康にいいかのように言って国民を騙したことについては今でも憤慨している。
納豆ダイエットの偽装でも騙された人が多かったわけだ。

これは、一種の詐欺であるが、これに騙されないように国民が全員一定の科学的思考力を持たないといけないのだ。
しかし、現行の教育過程ではむしろScienceと乖離した、というかほとんど中身のない理科を教えているだけにすぎない。
これでは科学リテラシーが育たない。


このようなことをテーマにしたシンポジウムだった。

講演者は
・北原 和夫(国際基督教大学教授/東京工業大学名誉教授/物理チャレンジ・オリンピック日本委員会委員長)
・滝川 洋二 (NPO法人ガリレオ工房/東京大学)
・元村 有希子 (毎日新聞社)
・清原 洋一 (文部科学省)
・渡辺 正 (東京大学生産技術研究所教授/高校化学グランプリ委員長)
と、すごい方々がいらした。

ちなみに、渡辺正研究室では前学期ずっとUROPという授業を通して研究をさせて頂いた。
また物理チャレンジ、化学グランプリで高校時代から北原先生、渡辺先生にはお世話になっていた。


今回のシンポジウムは日本の今後の文科省の教育制度について考えさせられるいい機会となった。
北原先生は、科学リテラシーの必要性やどういうことが欠如しているのだろうかという大枠を述べられ、またご自身の英国での経験を交えての他国との教育の比較を明快に述べられていた。
元村氏も、先月(9月)まで一年間英国へ社費留学されていたそうで、その経験を交えた内容だった。
英国人は日本人よりか何倍も科学関連の講演会やフェスティバルに積極的に参加するような風土が育っている一方、英国特有の階級制度の下位に属する人はあまり科学に接することができていない、という現状をうかがった。

滝川氏は。。。
ガリレオ工房という所属している方だ。
実は、僕の小学生のころ所属していた科学技術館のサイエンス友の会の仲間から見れば、もっとも対極に属する人々でどうもとっつきにくい。
当時は、サイエンス友の会も同じ科学技術館5Fのワークスという部屋で研究をすることがあったが、小学生ながら彼らのことを敬遠していたのを覚えている。

実験ネタとしては面白いのだが、一過性の面白さしかないように感じられるところが残念だ。
もちろん、ガリレオ工房に属する先生方の中でもO先生という方(かつてNHKやってみようなんでも実験などでも出演されていた方)の教育方針は素晴らしいもので、小学生のころから結局物理チャレンジの時まで長い間お世話になった先生もいるし、素晴らしい人も数人いる。

でも、やはり講演を聞く限り、あまり内容が響いてこないように感じた。
なぜかというと、彼らの目指すものは、科学を面白いと思わせること、に尽きているからだ。
一見善いことをやっているように見えるから恐ろしいのだ。

確かに彼らの教材を組み立てたり改造したりすることで、いままでは考えられなかったような面白い発見が得られるかもしれない。
しかし面白いだけしかないのだ。
玩具を用いて遊ぶように。

科学というのは、不思議に思ったことに対して、それを検証するためのアプローチ(例えば実験装置などを開発することなど)から始まる。と思う。
もちろん、実験装置を製作することほど大変なことはない。
一方実験はどうか、実験は意外とあっさりと済んでしまうものなのだから。

そして、実験で何か結果が得られて、ただ喜ぶようではだめなのだ。
Scienceはその先に、実験結果を数値に読み換え(測定)、データを検証し、仮説を裏付ける、という一連の流れまでをしなくてはならないからだ。
そこまでいってやっと大きな喜びが得られるわけだ。

・・・・
まぁ、実際には彼らがどのような教育方針でやっているのかははっきりとはわからない。
ちゃんと科学の本質に根ざした企画をしているのかもしれない。
そもそもこんな場所で彼らのやってることを批判したところで意味がないのだが。



エセ科学を教える団体は日本にたくさん多い。(しかも大概は教える側も科学を教えているのだと勘違いしているのだが。)
彼らを批判するよりも何よりも、まんまと彼らの甘言に誘われて子供がエセ科学に侵食されていることに、無批判でいられる異常ともいえる親の科学リテラシー欠如が問題なのかもしれない。と感じた。



そして、文科省清原氏vs渡辺先生
両者の争点は学習指導要領についてだ。

文科省について。
まぁ、思っていた以上には文科省は理科教育について検討していたことはわかった。
以前よりは、若干マシにはなるだろう。
でも、所詮教科書指導要領が一部さし変わったこと、そして理科教育の目的が先述した科学リテラシー向上に依拠したものに変わる(つまり、エセ科学に騙されないようにしよう)ということ。

一方渡辺先生は高校化学の教科書の編纂なども受け持たれているわけだが、日本の学習指導要領の成立自体に疑問符を投げかけていた。
初めて知ったことだが、教科書指導要領の策定改定は非公開に実施されているらしい。
教科書編纂者である彼でさえもどんなに請求したところで指導要領の策定の内容を全く見れないとのこと。
たしかにおかしい。
科学リテラシー向上のためには全員がちゃんと身に付けなければいけない知識などを考慮検討する必要もあるわけだが、一方将来研究者であったり企業で活躍することを志すような人間にとって必要な知識も教科書に盛り込まなければならない。
なのに、先端研究についての知識が集結している学会などの意見を全く参考にしないのはおかしい話である。


先日数理科学研究科の加藤先生の所へ伺った際に聴いた話であるが、高校の数学の内容が少なすぎて大学人としては困る。とのこと。
彼が高校のうちに身につけるべき内容としてはテンソルの二次形式などを挙げられていた。
確かにこれらは大学に入ったら必要になるはずだ。
なのに高校で教えない。

やはり、渡辺先生のおっしゃるように学習指導要領の策定には各学会や専門家に意見を問う場を設けてもいいのではないだろうかと思われた。





全体として、このシンポジウムは「どのように青少年(という表現を使うと自分も含まれるので複雑な気持ちだが。:笑)に国として科学リテラシーを身につけさせるか」というようなテーマだった。
でも、もう一つ重要なこととして青少年に教育をする学校教育関係者や、親の科学リテラシーを上げることを考えなければならないだろう。
いくら素晴らしい教育理念があろうと、教育者が習熟していなければ全く意味がないからだ。

学校関係者や親の科学リテラシーを向上させるには、一世代入れ替わるくらいの長いスパンで考えなければならない。
もっと、教育者への科学リテラシー向上についての議論も活発になっていく必要がありそうだ。

2008.08.10 日曜日 [ Latest News, サイエンス]

物理チャレンジ(一日目前半)

サンライズ瀬戸を見送った後、前泊している物理チャレンジの委員長、副委員長の先生や事務局の方とともにホテルで朝ごはんを食べた。バイキングだったし、前日は軽食しか食べていなかったので、たくさん食べた。というよりも食べ過ぎた。

4人とも寝不足だったが、風邪気味なD.Nくん以外は先生方と岡山城見学に。
(↑後に気づいたことだが、ここで睡眠を取らずに無理をしたことが、結局物理チャレンジ全体の寝不足に直接的につながっている。次回からは気をつけよう。)


【10:30】
岡山城見学から帰ったら一度荷物を預けさせていただいたホテルに寄って、スタッフの集合場所に向かった。
2年前の物理チャレンジと同じ集合場所であるが、歩きながら昔を思い出し、郷愁に浸る。

その後自己紹介、打ち合わせ等があり、12:30ごろから参加の中・高校生が到着し始める。
自分の班員の名前を覚えるのに苦戦した。


【13:30 開会式開始】
委員長の開会宣言に続き、国際物理オリンピック(IPhO)の結果報告(金1,銀1,銅1,入賞2)があった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そういえば、日記に書くのを忘れたが、先日7月19日はIPhOの結団式(壮行会)に行った。
そこで、沢山の先生方とおしゃべりをし、オリンピック代表者とも知り合いになることができた。
今年はベトナムのハノイで大会が開催されたのだが、去年の問題の雰囲気と全く異なり、
理論問題は厄介なものが多く、全体的に苦戦を強いられたようだ。
そのような逆境の中で日本代表5人は奮闘し、全員入賞以上に入れたのは素晴らしいと思う。
来年も期待しよう。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ということで、IPhO報告の後は毎年お楽しみな講演会。
今回は杉山直先生(@名古屋大学)という方がいらっしゃった。

テーマは宇宙の進化論。
最近は、観測技術の向上が昔の宇宙を直接的に調べる手がかりとなっていることについて述べていた。
確かに、2006年のノーベル物理学賞の受賞はCOBE衛星という宇宙の奥深く(百億年以上昔)から放出される電波の揺らぎを観測したことが、授賞理由だったのは僕も鮮明に記憶している。
やはり、観測は宇宙論を強固なものにしていくのに欠かせないらしい。

杉山先生の話もCOBE衛星の話になった。
COBE衛星の受賞者2人は、熾烈な権力抗争の中で勝ち抜いた二人であることを言っていた。
(高校生対象の講演会ではタブーな内容にも感じるが、高校生に現実を見せない講演などよりは断然よかったかも知れない。)
いやいや、研究の世界は競争が熾烈だな。と感じた。

質問もたくさん飛び、やはり選ばれた物理好き100人集めると場の雰囲気が異なるなぁと実感した。
講演会の内容自体はほとんど知っていることであったのである意味つまらなかったが、その講演を真面目に聞く高校生の姿に感動していた。
学問としての物理を愛しているんだな。と実感した。

後はアトラクションがいくつかあった。

その後の立食パーティーは宿舎に移動してからであった。
振り返ってみると今回の物理チャレンジはバイキング形式の食事が多く、全体的に食べ過ぎたようだ。

立食パーティー以降のことはまた後で続けて書くことにする。

これからちょっと新宿の自転車屋さんに行く用事があるからだ。