海外で迎える誕生日

イギリスで誕生日を迎えました。海外で誕生日を過ごすのは、5年前のアメリカ(カリフォルニア)、昨年のドイツに続いて3度目でしょうか。なんだかんだでお祝いしてもらうこともありましたが、今回は一人で過ごします。

先日ブログに投稿しましたとおり、現在はイギリスでの就労許可の更新に伴い、今週は書類の用意などに忙しい日々でした。


EU諸国の人などはすべてオンラインのアプリで申請が完結するようになっているのですが、まだ日本国籍者はパスポートの原本を持って窓口に行く必要があります。パスポートの必要書類を専用のWebサイトからすべてアップロードし、予約が取れた木曜日(2月25日)にビザの受付登録センターに行ってきました。(詳しくは以下のツイッターのツリーを参照のこと。)

ビザセンター、予約でいっぱいだったはずなのにゆったり。ウェブでアップロードした書類のチェックと、パスポート原本の全ページチェック(すでにスキャンして送ったもの)と、顔写真の撮影、指10本分の指紋スキャンしておしまい。SkilledWorkerVisaだからStraightforwardだから大丈夫、と聞く。

Skilled Workerビザの場合、必要とされる書類は、職場からの証明書、現在の在留許可カード(BRPカード)、あとはパスポートだけで済むので、窓口の受付もほんの15分なんですけどね。移動時間だけが無駄に長いわけです。はるばるハル(Hull)という街まで行きましたが、オランダのロッテルダムと結ぶフェリー航路があったりヨーロッパ大陸側との物流拠点港の一つであり、町並みもどちらかというと大陸ヨーロッパっぽい雰囲気もすこしだけ感じられるような街でした。ただ、Brexitのあおりか、失業者も多い印象を受けました。


ちなみに申請の方はさすがはSuperPriorityでの応募だけあって、最長24時間かかる、というところ、申請から3時間後には「認可されました」とメールが来た。大金を払っただけのことはある。すばらしい。 あとは在留カード(BRP)が届くのを待つのみ。7営業日と書いてあるけど、来週中に来るといいな。

家に帰宅したころにはすでにイギリスの内務省(HomeOffice)からメールとSMS(SMSは2ポンド払うとオプションで届くけど、実際お金の無駄)が届き、手続き全部終わったよ。認可されたよ、と連絡が来る。さすがはSuperPriority。24時間以内というから遅くとも26日中には終わると予想できましたが、ちゃんと数時間で仕上げてくれました。イギリスはお金を積むとちゃんと対応してくれる国なんですよね、ほんとに。(イギリスのご飯がまずいっていう話を聞きますが、それはお金をケチるとまずいご飯しか食べられないんだろうというのが今の理解です。とはいえヨークの街はご飯が美味しいことでも有名で、比較的どのお店でも安心して食べられますので皆様お越しください。)


なんでこんなにビザの申請を急いでいるのか。

これはもうすでに昨年の地点では予想されていたことではあるのですが、幸運なことに4月に日本の理化学研究所で僕が主導する加速器実験を行うことができる、ということが確定したためです。日本で働く研究員や優秀な大学院生の方々のおかげで最低限の実験遂行は見込まれます。ただ、僕が目指す実験は本来はフランスからある実験装置を借り受けてそれと組み合わせることで目的が達成されるとの予定でなかなかチャレンジングなものでした。しかし、日本の入国の水際対策で国籍ごとに待遇を分けるという(逆に言えば日本人の入国者に対してはゆるいという)、根本的には問題を解決できない対策を行っているため、僕が望んでいた実験装置を持ち込んで組み立てるということができない状況になってしまいました。本来ならば、昨年の5月には実験を行うはずだったのですが、一年待っても状況は変化せず、むしろ他に借りている、鍵となるスイスの研究所から借りた実験装置を所有者に4月末には返還する必要がでてきてしまい、もう片手落ちながら実験を敢行する必要性がでてきました。もともとチャレンジングな実験だったのですが、更に難易度が上がり色々と事前検討とマンパワーが必要となりました。

運良く僕は日本国籍を有しているため、日本に入国することができます。日本に帰ったら当然ですが14日の自主隔離はしっかりと徹底することは当然のこととして、とはいえ現在国際的な人の往来も制限され、僕が所属する大学も海外出張はよっぽどの理由がなくては認可されません。出張開始日の14日前までに、リスクアセスメントなどの書類を整え、物理学科の専攻長の承認を経て、大学の中央事務の担当者が書類を精査するというプロセスが必要とされます。ビザの申請と同時にこちらの手続きを完了させなくてはならず、とにかく忙しい一週間でした。あと、もう一つは日本への出国前にイギリスで渡航前の事前PCR検査をする必要があるのですが、PCR検査ができるクリニックは軒並み予約で一杯でこちらの予約が現時点での難関となっています。他にも片付けないといけない書類もあります。

とはいえ、すべての書類がうまくいけば、3月中旬に日本へ渡航し、その後14日間の自主隔離を経て4月頭より実験の準備、そして加速器実験へ突入となります。とはいえ、最速で頑張っても一週間しか実験準備に僕が携わることができず、現地で働く共同研究者の皆様の理解を得ることがなによりの大切なこととなると思っています。


本日も日本とつないで共同研究者の方々とミーティングをしたのですが、なんというか予想はしていたのですが、日本側もマンパワーが相当に足りていないみたいで、正直いって僕が頼れる人はいないのかなと感じてしまいだいぶ落ち込んでしまいました。今週はただでさえ自分自身の手続きで忙しいだけでなく、個人的なことで複数の失敗を繰り返してしまっており、もともと気持ちが塞いでいたところもあるのですが、正直いまはどうすればいいのかわからないくらいです。

加速器の実験というのは、多くの人の協力があってこそのもので、かつ電気代も並大抵のものでは有りません。研究に使える予算というのも限られているなかで、せっかく僕が実験を主導させていただける機会を得たこと。その責任者として今回は僕が振る舞うべきであるということ。そういうことを考えると当然逃げることはゆるされるべきではありません。とはいえちょっと今はどうすればいいのかわからず、だいぶ混乱しています。4月の実験の後には笑顔で居られるんでしょうかね。もはや誕生日をお祝いしているような気分でもありませんし、きっとこの文章をここまで読んでくださった方も、「そんなこと言ってないで仕事すれば?」という話になりますが、今の気持ちをそのまま文章にしておいたほうがいいのかなと思い、書いてみました。

正直言って、この一年間はもがいたものの本当になにも生み出せなかった気がします。でもこれから先もどうなるのかとても不安な気持ちでいっぱいです。一年後、何を思っているんでしょうかね。


とはいえ、ここ数年、誕生日になって思うのは、両親には感謝しないとなと思うことです。よくもまあこんな何やっているかわからないようなニンゲンをここまで育てることができたよなと。自分が同じ立場だったらどう思っただろうかと感じることはあります。この場をお借りして感謝を申し上げます。

あとは、自分の年齢と、自分が生まれたときの両親の年齢を考えてしまいますね。最近は。。